ベスト盤をつくろう(久々)

「レット・イット・ビー」編

 ビートルズの公式カタログ上では最後のアルバムになります。グループの最終作品にふさわしく中身は「ホワイト・アルバム」以上に統一感が無く崩壊していくグループのメンバー関係の悪化がよーくわかる出来ばえとなっています。日本では最も売れたアルバムになっているのは作品に内在する寂寥感みたいなものが民族の琴線に触れるものだからでしょうかね?

 私も最初に購入した作品はこの「レット・イット・ビー」でしたからそれほどは悪い作品のようには思えません。他のアルバムに比較して多少は分裂気味かなあという程度かと思います。この作品が本当に最後の作品であればファンとして大変残念なことでしたが実質上の最終作品が他にあるのが救いになっていますね。

 アルバム制作にとりかかったのは「ホワイト・アルバム」が発売された68年の10月ごろだと推測されます。実際に作品を持ち寄り録音を開始するのは69年になってからですが「ホワイト・アルバム」作成時に生じたグループ内の亀裂を修復したいという意図もあり早々に計画されたようです。当時はブライアン・エプスタインというグループを世界へと導いてくれたリーダーを失いメンバーも各々の価値観で行動するようになっていたためグループの存続に危機感が生じていました。

 そこで次回作を作成するにあたり幾つかのアイデアというか基本方針が決めれられました。

 1 それまでの過剰なオーバー・ダヴィングを廃しギター3本とドラムスだけのシンプルな構成にす   る事。

 2 アルバムのジャケットはデビューアルバムの「プリーズ・プリーズ・ミー」に模したものとする

 3 録音と同時に録音風景を撮影し、ドキュメンタリータッチのテレビ映画を作成する事。

 と言った具合で「原点回帰」によるグループの結束力強化を考えられていたようです。で、1月からの録音はそのものずばりの「ゲット・バック・セッション」と呼ばれています。録音当時の様子は幸か不幸か映画「レット・イット・ビー」からうかがい知る事が出来ますが私は一部しかこの映画を観ていないので言及しません。見た人の話によるとあまりやる気が感じられないとのことです。

 「ゲット・バック」と力んでもすでにメンバー全員年を取っていました。もう若かった頃の情熱を取り戻せるはずも無くなんとなく持ち寄った曲をあまり推敲もせずに録音しどんどんOKを出していったのがこのセッションだったようです。クライマックスはアップル本社ビルでの有名なルーフトップライブでこれをもってメンバーにとってあまり実りの無いセッションは一応終了したのです。

 さてさて、グループのメンバーにとって面白みの無かったというか気乗りのしなかったセッションでしたがアルバムという作品としてとして世に送り出さなくては商売にはなりません。本来であればアルバムと言う体裁を整えるべく録音した作品群から必要な分をピックアップし必要と有らばオーバーダビングを加えるといった作業が必要ですがメンバーはこれをプロデューサーに任せてしまいました。もともと迷走気味のアルバム制作でしたがここから更に迷走を続ける事になりました。

 当時、ジョージ・マーティンはEMIを退社していたため別のプロデューサー(グリン・ジョンズ)がこの役にあたりましたが悪戦苦闘のうえ完成させたアルバム「ゲット・バック」のマスターテープをメンバーは却下(5月)、更に70年1月の改訂版マスターも却下と上記の演奏内容にもかかわらずアルバムの出来にこだわります。だったら自分たちでやればいいのにとも思われますがそれをしなかったためフィル・スペクターの登場(70年3月)となりました。

 後はご存知の通り、見事にコーティングされたサウンドのアルバムが完成・発売となり現在の「レット・イット・ビー」になるわけでポールの怒りを買っちゃったりするんですけど発売までの経緯を考えれば「まあ、仕方ないな」と思わざるを得ません。結局、最初の基本方針は作品に反映されないこととなりましたが現在では「ネイグト」がありますからそちらで当初の雰囲気を味わうのも一興でしょう。

 このアルバムの作品なら「レット・イット・ビー」は必聴でしょう。端正なたたずまいのシングルバージョンも捨てがたいのですが思いっきりリードギターがフューチャーされたロック色の濃いアルバムヴァージョンに軍配を挙げたいと思います。「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」は作者の意図を反映したストリングスのない「アンソロジー3」ヴァージョンを推奨します。シンプル・イズ・ベストの好例かと思います。

 ベスト盤をつくるにはこの作品から録音するのは難しいですね。なぜなら当初の基本方針どうりの録音がされていてライヴタッチの部分があるため出来上がったベスト盤に統一感がなくなるといったこの「レット・イット・ビー」と同じ問題が発生するからです。フィル・スペクターも苦労したんだろうなと意味無く同情したりしますね。レット・イット・ビー
レット・イット・ビー

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