ベスト盤をつくろう(16)

「アビー・ロード」編

 20世紀最大のロックグループが最後に放ったモンスターアルバム。最高傑作に推す人も多い正真正銘最後の録音作品。発売は69年の9月なので70年4月発売の「レット・イット・ビー」の方がカタログ上後ですが録音自体は「アビー・ロード」が69年7月、「レット・イット・ビー」は69年1月のため近年の解説本では紹介順がかつての本とは逆になっています。

 69年の5月某日、ジョージ・マーティンの元に「あと一枚だけアルバムのプロデュースを頼みたい」とポールから電話があり「従来のやり方でなら」とOKを出したところから「アビー・ロード」は始まりました。「あと1枚だけ」が微妙ですね。

 半年前の「ゲット・バック・セッション」の失敗で明らかになったのはメンバー間の関係がすでに修復不能な状態にあり、グループとしての「ビートルズ」を維持してゆくことが最早不可能である事でした。このことが傑作を生み出す最大の要因となったのですから運命とは皮肉なものです。

 「これで最後だから」これが多分メンバー全員が頭にあった思いであり、これがグループとして最後の作品を仕上げるため全力を注ぎ込ませた要因になったのでしょう。これさえ済ませれば楽になれると思えばたいていの仕事は乗り切れるものですものですからね。

 今回の録音は使い慣れたアビー・ロード第2スタジオを7月から8月一杯まで貸しきって行われ特に7月の後半はレコーディングにすべてのスケジュールを優先させるといったかつての如き凄まじき集中力をもって精力的に取り組まれたようです。

 出来上がった作品はそれまでの集大成的な作品、デビュー作の「プリーズ・プリーズ・ミー」から今までに培ってきた全てを注ぎ込んだ非常に完成度の高い作品になったのでした。これが後に作品のマイナスイメージになろうとは・・・

「アビー・ロード」はビートルズの集大成的な作品でした。それゆえ欠点を探すとすると新機軸を打ち出していないという点があげられます。要するに目新しい事をアルバムで試みていないと思われたのですね。実際にはムーグシンセサイザーを使用したり3声の和音を三重録音したりB面全体をメドレー化したりと色々試みているのですがその原型が以前の作品等にみられたため「それ程斬新ではない」ように思われたのでした。

 70年代も後半に入ると突如ロンドンにパンクのブームが訪れます。それまでは「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」と並んで最高傑作の誉れ高かった「アビー・ロード」でしたがその完成度の高さから評価が下がったのです。不思議。まあ、パンクムーブメント自体がロックミュージックの「むき出しの原点」みたいなものを尊びましたから仕方ありませんが。

 2006年の現在、このアルバムの感想を書くためMDに録音し(おお、ここで購入したブランクMDが役に立った)通勤中に何度も何度も聴きかえしました。結果、何回でも聴くことができる作品である事が改めて実感でき、その完成度の高さはまさに「プロのミュージシャンがプロの仕事に徹した」結果であり、それゆえ大人のためのロックアルバムになったと思えたのです。

 ロックなのに大人のため?不思議にそう思えるのです。B面の「ゴールデン・スランパーズ」「キャリー・ザット・ウエイト」「ジ・エンド」の展開は圧巻、グループの最後のアルバムの最後の曲に「ジ・エンド」。しかもこの曲はリンゴのドラムソロからポール、ジョージ、ジョンのリードギターと続くフィナーレになっているのです。お終いをこんなに鮮やかに演出したグループを私は知りません。多分これからも見ることはないと思います。最後の歌詞も秀逸!

  
             「あなたの得る愛は、あなたが与える愛とおなじ」




 この後にあるおまけの1曲を良しとしたのもいビートルズらしいちゃーらしいがね。どーなの?

アビイ・ロード
アビイ・ロード

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  • 「ベスト盤をつくろう(16)」について

    Excerpt: 「ベスト盤をつくろう(16)」について 私も「ABBEY ROAD」は好きです。とりわけB面のYou never give your moneyから続くメドレーは最高ですね。シンセサイザーの使用など、.. Weblog: Wood Eight Cafe racked: 2006-03-07 06:10