「ホールド・ザ・ライン」TOTO

 ロックグループは一部の例外を除いて自ら演奏を行います。当たり前じゃないかと思う人もいるかと思いますが近年ではコンピューターテクノロジーの進歩でメンバーが楽器を持たずともパソコン上で作曲したり、スタジオでの演奏なしでもレコーディングしたりという業が出来るようにはなっています。すべてをパソコン上で録音というわけにはいかないでしょうがリズムパターンの打ち込み分野はデジタルの正確性にはかないません。(良し悪しは別です)

 演奏能力はしばしばグループの実力とに直結して語られるのですが実際の問題としては「グループの実力=演奏能力」ではありません。演奏技術は確かに実力の一要素ですが例えばヴォーカリストのグループの目指す音楽的方向性への適性であったり、作詞作曲能力の有無などの方がずっと重要なファクターだったりするのではないかと思います。

 90年代の一時期にテクニック至上主義がもてはやされた時代がありましたが当時持ち上がられたギタリストがどのくらいシーンに残っているかというとほとんど見る影は有りません。街のCDショップで何年も前から置かれている作品タイトルを見かける度に「今も活動しているのだろうか」と懐かしむ程度です。

 私自体は表現者でもなんでもなくただのリスナーなのでアーティストがどう思っているか分かりませんが「演奏は素晴らしかったがどんな演奏だったかは全然記憶に残らない、楽曲も思い出せない」受け止められかたはあんまり幸福そうには思えません。ワンフレーズでも記憶に留めていてくれてたまに思い出して口ずさんでくれる方が嬉しいんじゃないかなと考えたりしますね。

 それと比べるとクラシック音楽の世界は演奏による不朽の名演が存在するのでポピュラーミュージックとは一線を画しているなあと思います。もっともこちらは作品の評価がほぼ固定化しているので作品の内容ではなく作品の解釈や表現方法で勝負するしかありませんから比較するのもおかしいのですが・・

 などと演奏能力についてぐだぐだと書いてみましたが「演奏能力は高いにこした事はない」のであることは違いありません。プロとして音楽業界を生きていくにはある一定以上の能力は必要でしょう。ですが最初から他を圧倒するほどのテクニックを持った新人などそうはいませんゆえにデビュー後(生き残れたらの話ですが)徐々に演奏能力が向上していくのが普通です。

 ロックミュージックの世界でも最初から演奏能力が向上しなかったグループはレッド・ツェツペリンとキング・クリムゾンくらいです。それでも時折「新人の割りに高レベル」と思わせるグループも稀にあります。

TOTOはそんなバンドのうちのひとつでした。他に思い浮かぶのはエイジアだけですがこのバンドは元キング・クリムゾンだの元イエスだのプログレバンドのベテランメンバーが結成したいわゆるスーパーグループなので「新人」扱いするのは適当ではありませんよね。

 TOTOもLAの凄腕スタジオミュージシャンで結成されたバンドなので純粋に新人とは言いがたいのですがメンバー名に聞き覚えがなかったので新人の範疇として捉えてもいいのではないかと思います。まあ、今思えばスティーブ・ルカサー、ボーカロ兄弟など錚々たる面々ですが・・・

 「ホールド・ザ・ライン」をはじめて聴いたのはラジオの番組でした。その印象はというと「圧倒的に演奏力は高い、曲に勢いがある、惜しむらくはヴォーカルがちょっと演奏に比べて弱いので浮き気味」といったもの。この感想を友人に漏らしたところ「新人なんだからそこがいいのでは」と言われた思い出があります。

 曲は勢いに乗って79年に5位を記録、アルバム「宇宙の騎士」もヒット(9位)し続き「ハイドラ」、「ターン・バック」アルバムを発売、セカンドアルバムの「99」なんか好きでよく聴きました。グループの頂点は4作目の「聖なる剣」で迎える事になります。

 アルバム「聖なる剣」には「ロザーナ」、「アフリカ」といったヒット曲も多く収録され、何よりもその演奏、録音が素晴らしくまさしく「磨きぬかれた演奏が空間を蹂躙する」出来栄えです。「ロザーナ」のキーボードプレイなんか最高です。TOTOのオリジナルアルバムの購入を検討するならこのグラミー賞獲得アルバムを1番に考えるべきでしょう。

が、いま心にあるのは「ホールド・ザ・ライン」なのです。年を取ったせいでしょうね。完璧な演奏、卓越した録音技術を誇る完成品よりもあの頃の勢い、瑞々しさに魅力を感じるようになったのです。懐古趣味なんだろうなあ・・。そういえば毎年NHKで放送される「思い出のメロディ」をチェックしている自分がいたりして・・・・ヤッバ!





 宇宙の騎士
宇宙の騎士

この記事へのコメント

2006年10月09日 10:26
こんにちは。
TOTOⅣは確かに名作ですけど、このホールド・ライン収録のアルバム「宇宙の騎士」の1~2曲目の展開ってものすごくカッコイイと思います。
ジャケも最高ですよね
2006年10月09日 23:36
こんばんは。
コメント有り難うございます。
TOTOのアルバムジャケットはあの剣がなんかいいんですよねえ。でも、「ターン・バック」だけ顔文字みたいにしちゃったのでしょうか?(笑)
2006年10月13日 09:27
おはよ~ございます。
確かにToToのウィーク・ポイント(?)はヴォーカルでしたね…殆どの曲で印象に残るのはイントロとか間奏などの演奏面でした。そういう意味では「ホールド・ザ・ライン」は「アフリカ」とならんでサビのメロディがしっかり残るToToらしくない(?)曲なのかもしれません。
2006年10月14日 13:34
こんにちは。shigeさん。
そうなんですよね。TOTOってどーしてもスタジオミュージシャンの集合体っていうイメージがあるものだから聴く方が曲そのものよりも演奏に集中しちゃうんですよねー。申しわけないなー

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